【スマート・スリムな優等生、ウィペット】

ウィペットの基本情報(性格・しつけ・病気など)

 
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ウィペット
[英記]:Whippet

    ◇基本データ
  • ・サイズ: 中型犬
  • ・体高:45cm~55cm
  • ・体重:9kg~10kg

  • ◇起源・歴史・沿革・系統:
  • ウィペットは、原産国イギリスでドッグレースのために生み出された犬種です。
    そのため、走るのが尋常でないレベル感で速く、同サイズの犬種の中では 短距離最速のスピードを持つとも言われています(全力で走った際のスピードは時速60kmにもなる)。

    実は成立については、はっきりしない部分があるのですが、18世紀末ごろのイギリスにて、 農夫たちに害獣駆除の猟犬として飼われていた犬(小型のグレー・ハウンド)をベースとして、 いくつかのテリア種(マンチェスター・テリア、ベドリントン・テリア、ホワイト・テリア)とかけ合わせて、 生み出されたという説が有力なものになっています。

    ウィペットは、もともとはウサギを何匹咬み殺したかを競うゲーム用の犬として使われており、 『スナップ・ドッグ(=咬みつき犬)』という呼び名も持っていました。
    産業革命ごろの当時、労働人口が農村部から工業地域に移ったことに伴い、娯楽としてドッグレースも盛んになっていきました。
    労働者のスポーツに発展していったドッグレースで活躍していたウィペットは「poor man’s race horse(貧乏人の競走馬)」とも呼ばれていました。

    イギリスではグレー・ハウンドを使った楕円形のトラック(コース)によるレースが盛んでしたが、 ウィペットを使った短距離の直線コースを走るタイプのドッグレースも行われるようになり、 ウィペットの競走用犬種としての活躍が始まりました。
    コースが直線である理由は、単純にウィペットがカーブを走るのが苦手なためです。

    ちなみに、現在、家庭犬として一般家庭で飼われているウィペットは、 レースドッグ用のウィペットがひと回り小型に改良されたものになります。
    グレーハウンドがドッグレース用の犬種として一般的になるとともに、ウィペットは以前ほどはレースに登場しなくなりました。

    1888年に、ウィペットは正式に犬種として認定されました。


    尚、『ウィペット』という名前の由来は、全力疾走している姿が、 まるで馬を鞭で飛ばす(whipped up)ようであることから来ています。
    それと、ウィペットの遺伝子異常のメス『ウェンディ』という、筋肉量が非常に多く、 通常のウィペットの倍以上の体重にもなる個体もいますが、あくまで遺伝子異常の状態であるための姿となります。


    ◇こんなスタイルで犬を飼いたい方・こんな状況の方との相性Good!!
    ・とにかく飼いやすい犬(賢くもおとなしい落ち着いた犬)であることを重視
    ・しつけしやすい初心者向きの犬種を希望
    ・毎日の若干長めの散歩やドッグランなどの運動できる環境を用意してあげられる
    ・子供との同居する上での相性もきちんと考慮しておきたい
ウィペットのメイン写真 ウィペットの特徴評価グラフ

しつけのしやすさ

ウィペットは、イギリスで生まれた小型サイトハウンド(視覚型ハウンド)で、もともとはウサギや小動物を追跡するために改良されてきた犬種です。
そのため、俊敏な反応と瞬発力、そして高い集中力を持ち合わせています。しつけのしやすさという観点から見ると、非常に賢く人間とのコミュニケーションを好む犬であるため、基本的な指示や家庭でのルールを学ぶことは比較的スムーズに行えます。ただし、同じ「覚える」という点でも、ラブラドールやゴールデンのような汎用性の高い作業犬とは少し性質が異なります。
ウィペットは、命令に対して「なぜそれをするのか」という納得感を重視する一面があり、強制的に従わせるようなトレーニング方法では反発心や無関心を招いてしまうことがあります。

ウィペットのしつけを行う上で大切なのは、ポジティブ強化を中心とした手法です。褒め言葉やおやつ、遊びを報酬にして「望ましい行動を繰り返したくなる」ように導くと効果的です。特に遊び好きで、飼い主と一緒に楽しめることが好きなため、トレーニングをゲームのように工夫することで、覚えも早くなります。また、ウィペットは非常に敏感な犬種で、飼い主の声色や表情の変化に敏感に反応します。大声で叱ることや、手をあげるような行為は信頼関係を損なうリスクが高く、逆に萎縮して行動が消極的になることも少なくありません。したがって、落ち着いた口調で一貫性を持った指示を与え続けることが、結果として良い学習に繋がります。

また、ウィペットは本能的に「動くものを追う習性」が強いため、散歩中の小動物やジョギングしている人、自転車などに突然反応して走り出そうとすることがあります。これは狩猟本能に根ざした自然な行動ですが、都市部や住宅街では危険を伴います。そのため、幼い頃から「待て」や「呼び戻し」のトレーニングをしっかりと行うことが不可欠です。ただし、サイトハウンドの特性として、呼び戻しはレトリバー種ほどの確実性を期待するのは難しい場合もあります。飼い主と犬との信頼関係が深いほど成功率は上がりますが、万全を期すならドッグランなど安全な環境以外でのオフリードは避けたほうが無難です。

さらに、ウィペットは繊細な神経を持つため、しつけ環境の整え方にも配慮が必要です。騒がしい場所や人の出入りが激しい状況では集中力を保ちにくく、学習の定着に時間がかかることがあります。家庭内でのトレーニングは、なるべく落ち着いた環境を整え、短時間で区切りながら行うと良いでしょう。一度に長く教え込むよりも、毎日少しずつ繰り返す方が確実に習得していきます。

総じて言えるのは、ウィペットは「しつけの難しい犬」ではなく、「感受性の高さゆえに飼い主の対応が問われる犬」であるということです。適切に対応できれば、家庭内で非常に従順で礼儀正しい犬として育ちます。逆に誤った方法をとると、恐怖心やストレスから問題行動が出やすくなるため、飼い主の冷静さと根気が成功の鍵になります。

気性の穏やかさ・性格

ウィペットは、そのしなやかな体つきや俊敏な動きから「常に活発で落ち着きがないのでは」と誤解されることもありますが、実際の性格は非常に穏やかで落ち着きがあります。家庭においては、まるで猫のように静かにソファでくつろいで過ごすことを好み、室内では驚くほど大人しい犬です。飼い主と寄り添って休むことが大好きで、人間に対する愛情も深く、信頼関係を築ければ非常に従順なパートナーになります。この「オンとオフの切り替え」がはっきりしている点がウィペットの大きな魅力です。外では俊足を生かして全力で走り回りますが、家に帰れば落ち着いた家庭犬として振る舞う、その二面性が特徴的です。

性格の面で特筆すべきは、ウィペットの温厚さと優しさです。一般的に闘争心は低く、攻撃性も強くありません。もちろん個体差はありますが、多くのウィペットは無駄吠えが少なく、来客に対しても過度に吠え立てることはあまりありません。このため集合住宅や都市部の生活にも比較的適応しやすい性格といえます。

一方で、その穏やかさゆえに「繊細さ」も際立っています。ウィペットは感受性が非常に強く、飼い主の気持ちや家庭内の雰囲気を敏感に察知します。叱責されると深く落ち込み、時には行動が消極的になることもあります。例えば、厳しいしつけを繰り返すと委縮してしまい、自発的に学習する意欲が削がれてしまうことがあります。逆に、優しい声掛けや褒める習慣があると、ぐんぐんと自信をつけて本来の明るく素直な性格が引き出されていきます。この「敏感さ」を理解し、飼い主が精神的に安定した態度で接することが、ウィペットの心を安定させる重要なポイントです。

また、ウィペットは強い「絆志向」を持っています。飼い主と一緒にいる時間を強く求め、長時間の留守番は苦手です。放っておかれる時間が続くと孤独感からストレスを感じ、家具をかじる、部屋を荒らすといった問題行動につながる可能性もあります。特に若齢期には、できるだけ家族と過ごす時間を確保し、愛情を持って接してあげることが心の安定につながります。その意味で、単独で庭に放しておくだけの飼い方や、外飼いは全く適していません。人と共に暮らし、人の傍で安心を得ることがウィペットの精神的な健康を保つ基本となります。

他の犬との関係においても、攻撃的に振る舞うことは少なく、比較的フレンドリーに接する傾向があります。ただし、遊びの最中でも俊敏さと瞬発力があるため、動きが遅い犬や小型犬にとっては少し圧倒的に見える場合もあります。遊び相手の選び方や環境への配慮は必要です。

総合的に見れば、ウィペットは「穏やかで優しく、飼い主に寄り添う家庭犬」と表現できる犬種です。人と過ごすことに喜びを感じ、外では俊敏なアスリートとして、家では静かな伴侶として、二つの顔を持っています。その温厚で素直な性格は、多忙な日常の中でも心を和ませてくれる存在になるでしょう。ただし、その繊細さを理解し、孤独に弱い面に配慮して接することが、ウィペットと幸せに暮らすための最大のポイントです。

病気・けがへの強さ・寿命

ウィペットは、見た目の華奢さや細身の体から「健康に不安が多い犬種」と思われがちですが、実際には犬種全体として比較的健康的で、遺伝性疾患の発症率も他の純血種に比べて低めとされています。もともと実用犬として発展してきた背景もあり、極端な改良を受けていない分、体質的には丈夫な部類に入ります。平均寿命は12〜15年程度とされ、中型犬としては標準的、あるいはやや長めです。ただし、体の構造や薄い被毛から生じる特有の弱点や注意点が存在します。

まず大きな特徴として、ウィペットは体脂肪が少なく皮膚も薄いため、寒さに弱いという点があります。冬場や雨の日の散歩では体温を奪われやすく、低体温症のリスクが高まります。したがって、洋服やコートを着用させることがほぼ必須になります。逆に暑さには比較的強いものの、直射日光の下では熱中症の危険性があるため、夏場の運動は早朝や夕方など涼しい時間帯に行う配慮が求められます。体温調整に関しては飼い主のサポートが欠かせない犬種です。

次に、ウィペットが比較的遭遇しやすいのが「けが」です。非常に速く走る能力を持つため、ドッグランや広場で全力疾走した際に急な方向転換で脚を痛めたり、ぶつかった衝撃で骨折や脱臼を起こす可能性があります。特に前脚や足首周りの関節は細く、衝撃を受けやすい部分です。そのため、安全性が確保された場所で運動させること、滑りやすい床での急な動きを避けることが大切です。また、皮膚が薄いため擦過傷や切り傷を負いやすい傾向もあります。走ること自体は彼らにとって必要不可欠な本能的行動ですが、その環境整備を怠ると怪我のリスクが高まる点を理解しておく必要があります。

遺伝性疾患の観点から見ると、ウィペットは他の純血種に比べて深刻な遺伝病が少ないとされていますが、いくつか注意しておくべきものがあります。例えば、心疾患(僧帽弁閉鎖不全症など)や目の疾患(進行性網膜萎縮)が報告されています。
いずれも早期発見が予後に大きく影響するため、定期的な健康診断と心エコー検査、眼科検診が望ましいといえます。また、比較的稀ですが、サイトハウンド特有の麻酔に対する感受性の高さにも注意が必要です。一般的な犬よりも体脂肪が少ないため、薬剤の代謝に個体差が出やすく、手術や処置時には獣医師が適切な投与量を計算する必要があります。

歯や口腔のケアも重要なポイントです。細長いマズルを持つウィペットは歯石が溜まりやすく、歯周病に発展しやすい傾向があります。歯周病は全身の健康に悪影響を与えるため、日常的な歯磨きやデンタルケアグッズの活用が推奨されます。特に高齢期に入ると免疫力の低下も加わり、口腔環境の悪化が寿命に直接影響することもあります。

総合的に言えば、ウィペットは「疾患に強く比較的長生きできる犬種」ですが、その一方で「外的なけがや環境への配慮が不可欠な犬種」でもあります。寒さや怪我、そして歯のトラブルに注意を払いながら、定期的な健康診断を受けることで、持ち前の健康さを長く維持できます。適切なケアと環境調整ができれば、ウィペットは高齢になっても元気に走り回る姿を見せてくれる犬種です。

他の犬や子どもとの同居しやすさ

ウィペットは、その穏やかな性格と人懐こさから、家庭内での同居にも比較的適している犬種といえます。ただし、持ち前の繊細さや狩猟本能が影響する場面もあるため、同居にあたっては一定の理解と配慮が必要です。まず大前提として、ウィペットは攻撃性が低く、他の犬や人間に対してむやみに争うことを好みません。そのため、多頭飼育や子どもとの生活においても大きなトラブルは少なく、適切に導けば良き家族の一員として溶け込むことができます。

他の犬との関係については、比較的協調性が高い傾向があります。ウィペットは群れで走る性質があり、ドッグランなどで同じように走る犬と遊ぶことを好みます。特に同じサイトハウンド系統の犬(イタリアングレーハウンド、グレーハウンド、サルーキなど)とはスピード感や遊び方が似ているため相性が良いと言われます。ただし、体格差が大きい犬や遊び方の激しい犬と組み合わせると、衝突による怪我のリスクが高まります。ウィペットは骨が細いため、ラブラドールやシェパードのように力強くぶつかってくる犬種とは慎重に接触させる必要があります。

また、小型犬との関係には注意が必要です。ウィペットは小動物を追う本能が強く、素早く動くものに対して「獲物」としての反応を示す場合があります。もちろん家庭内で一緒に過ごすうちに慣れることは多いのですが、初対面や遊びの際には細心の注意を払い、急な追跡行動を制御できるようにしておく必要があります。小型犬と同居させる場合は、飼い主が十分に監督できる環境を整えることが不可欠です。

子どもとの同居に関しても、ウィペットは基本的に相性が良い犬種といえます。温厚で無駄に攻撃的になることが少なく、家庭内で静かに過ごすことができるため、小さな子どもとも安心して同居させやすいと評価されています。また、人に寄り添うことを好むため、子どもが膝の上に乗せたり、一緒に眠ったりすることも喜ぶ傾向があります。
ただし、ウィペットは身体的に華奢で、皮膚も薄いため、子どもが乱暴に抱きついたり、強く引っ張ったりすると簡単に痛みを感じてしまいます。そのため、子どもに対して「犬は優しく扱うもの」という教育を並行して行うことが非常に重要です。犬を玩具のように扱ってしまうと、ウィペットがストレスを感じ、時に身を守るために距離を取るようになる可能性があります。

また、ウィペットは騒がしい環境や大きな音を苦手とするため、元気いっぱいで大声を出す子どもがいる家庭では、犬が安心できる「静かな休憩場所」を用意することが求められます。子どもがリビングで騒いでいる間は、犬が安心して休める部屋やケージを確保することが、双方にとって快適な生活のポイントになります。

総合的に見れば、ウィペットは「温和で協調性のある家庭犬」であり、他の犬や子どもとの同居にも向いています。ただし、その繊細な体や本能的な性質を踏まえて、接触のさせ方や環境を整える必要があります。相手の犬種や子どもの性格に合わせて注意深く導いていけば、ウィペットは家族全員にとって優しい伴侶となり得ます。特に「無理をさせず、安心できる環境を整える」という点を忘れなければ、多頭飼育や子育て家庭においても理想的なパートナーになるでしょう。

運動量の多さ

ウィペットは「走るために生まれた犬」といっても過言ではありません。イギリスでウサギ狩りや小動物の追跡に用いられてきた歴史を持ち、またその後はレース犬としても活躍してきました。そのため、俊足とスタミナを兼ね備えた犬種であり、運動欲求を満たすことは生活の質を左右する非常に重要な要素になります。ただし「常に体を動かしていたい犬」というわけではなく、実際の生活リズムは「短時間の爆発的な運動」と「長時間の休息」がはっきり分かれる特徴的なスタイルを持っています。

まずウィペットの運動において最も大切なのは、全力疾走できる時間と場所を確保することです。彼らは普段は家庭内で静かに過ごすものの、本来の本能である「走りたい」という欲求を満たさなければ心身のバランスを崩す可能性があります。1日に1〜2回、数分から十数分ほど思い切り走る機会を持たせることで、満足感を得て落ち着いた家庭犬として過ごせるようになります。特に安全に囲われたドッグランや広場でのフリーランは理想的です。

しかし、ここで注意が必要です。ウィペットは視覚型ハウンドであり、遠くの動くものを瞬時に察知して追いかける習性があります。散歩中に猫や鳥、自転車などを見つけると、一気に加速して走り出そうとするため、リードを外すことは大変危険です。都市部での散歩では必ずリードを着け、急な動きに対応できるよう意識しておく必要があります。家庭内では庭や屋内で追いかけっこやおもちゃ遊びを取り入れるなど、安全な代替手段を工夫することも効果的です。

また、運動量という点では「体を鍛える」というよりも「心を満たす」ことが重要になります。ウィペットは持久力も一定程度備えてはいますが、マラソンのような長距離走を延々と続けるタイプではありません。むしろ短距離を爆発的に駆け抜け、その後はリラックスして休息するというパターンが自然です。飼い主が「毎日長時間歩かせなければならない」と思い込む必要はなく、質の高い運動時間を定期的に与えることで十分に満足します。実際、1日の散歩時間は合計で1時間程度が目安となり、そのうち一部をダッシュや自由運動に充てられると理想的です。

運動が不足するとどうなるかというと、ウィペットは退屈やストレスから問題行動を起こしやすくなります。家具をかじる、無駄に吠える、落ち着きがなくなるといった行動は、多くの場合「エネルギーが発散できていない」サインです。特に若齢期は運動欲求が強く、十分な遊びやランニングの機会を与えることが健全な成長に直結します。一方で、高齢期に入ると運動量は自然と落ち着き、ゆったりとした散歩と軽いダッシュ程度で満足するようになります。年齢や体調に合わせて運動内容を調整することが、健康維持のカギとなります。

また、ウィペットは「頭を使う遊び」にも喜びを感じます。俊敏な身体能力だけでなく知性も備えているため、知育玩具を使った遊びやトリックのトレーニングも良い刺激になります。走ることと頭を使う活動をバランス良く取り入れることで、心身ともに充実させることができます。

総合的に見ると、ウィペットは「運動量の質」に重きを置く犬種です。爆発的なスプリントを日々少し取り入れることが不可欠で、それが満たされれば家庭内では非常に静かに過ごすことができます。したがって、運動好きな飼い主や広いスペースを活用できる環境において、ウィペットは理想的なパートナーとなるでしょう。逆に、運動機会を十分に与えられない場合には不満が溜まり、ストレスから問題行動を招きやすくなるため、この点は飼育における最重要課題といえます。

体の特徴・被毛・毛色の特徴

ウィペットは、その優雅でしなやかな体つきから「走るための芸術品」と呼ばれることもある犬種です。グレーハウンドを小型化したような姿が特徴で、無駄のない流線型の体は、空気抵抗を最小限に抑え、俊足を支えるために特化しています。そのフォルムは単に美しいだけでなく、機能美に満ちており、走行性能を極限まで高めるために進化してきた結果といえます。

体高はオスで47〜51cm、メスで44〜47cmほどが理想とされ、体重はおよそ12〜13kg前後と中型犬の範疇に入ります。しかし、数値だけで見たときよりも実際はとてもスリムで軽やかに感じられます。筋肉は適度に発達しており、特に太もも周辺は強靭な筋肉で覆われ、瞬発的なスピードを生み出します。一方で、全体的には細身で華奢に見えるため、「弱そう」と思われがちですが、実際は丈夫で運動能力の高い犬です。

顔立ちは長く細いマズルを持ち、表情は繊細で優雅さを感じさせます。目は大きくアーモンド型で、やや憂いを帯びたような柔らかな印象を与えますが、走る際には鋭い視線で遠方を捉えます。耳は小さめで、普段はローズイヤー(バラの花びらのように後方に折れた形)をしており、表情に合わせて動く耳の姿は非常に愛らしいポイントです。

被毛は短く、非常に滑らかで密度のあるシングルコートです。毛が密生していないため手触りはシルクのように柔らかく、光沢を帯びて見えることもあります。その一方で、下毛が存在しないため保温性には乏しく、寒さに極端に弱い特徴があります。冬場や冷暖房の効いた環境では体温を守るために洋服やブランケットが必須です。また、毛が短いためブラッシングの手間は少なく、抜け毛の量も比較的少なめです。週に1〜2回、ラバーブラシで軽く整えてあげる程度で十分美しい被毛を維持できます。皮膚が薄いため強くブラッシングすると傷つきやすいので、優しく行うことが大切です。

毛色については非常にバリエーションが豊富です。スタンダード上、ほぼすべての毛色や模様が認められており、単色(ホワイト、ブラック、ブルー、フォーン、レッドなど)から、ブリンドル(虎柄)、パーティーカラー(白地に斑点)、さらには複雑な模様の組み合わせまで存在します。このため、同じウィペットでも個体ごとに外見が大きく異なり、それぞれが個性的な美しさを持っています。飼い主にとっては好みの毛色を選ぶ楽しみがあり、犬種全体として「画一的な姿」ではなく「多様性」を感じさせる特徴となっています。

体の特徴としてもう一つ挙げられるのが「皮下脂肪の少なさ」です。ウィペットは筋肉質で引き締まった体をしているものの、脂肪が少ないため硬い床の上では骨ばった部分が痛みやすい傾向があります。そのため、休むときには柔らかいベッドやクッションを用意することが欠かせません。特に胸骨や腰骨が当たりやすいため、硬い床での長時間の睡眠は床ずれや皮膚トラブルにつながる可能性があります。

全体的に見ると、ウィペットの体は「走るための理想的な設計」であると同時に「繊細さゆえの弱点」も抱えています。俊足を可能にする筋肉と骨格、優雅な見た目を作る被毛や毛色、そして薄い皮膚や脂肪の少なさが相まって、この犬種ならではの個性を形成しています。そのため、ウィペットの外見的な美しさに惹かれて迎える人も多いのですが、同時に「体の繊細さを理解し、守ってあげる」という姿勢が飼い主には求められます。

里親・ブリーダー・値段

ウィペットは日本においてはまだ珍しい部類に入る犬種であり、一般的なペットショップで見かけることはほとんどありません。そのため、迎え入れる方法としては「専門ブリーダーから購入する」か「里親募集を通じて迎える」のいずれかが主流となります。どちらの方法にもそれぞれの特徴やメリット、注意点があるため、事前に十分な理解を持つことが重要です。

まずブリーダーから迎える場合についてですが、ウィペットは血統や体型が重視される犬種であり、特にドッグショーやスポーツ(ルアーコーシング、アジリティなど)の分野で活躍している犬舎が多く存在します。信頼できるブリーダーは、犬の健康や性格を重視した繁殖を行い、遺伝性疾患のリスクを避けるために親犬の健康診断や交配計画をしっかり管理しています。こうしたブリーダーから迎えれば、健康的で性格も安定したウィペットと出会える可能性が高まります。

価格については、国内での相場はおおよそ25万円から40万円前後が中心とされています。毛色や模様の珍しさ、親犬の実績(ショーチャンピオンやレースでの成績)、血統書の有無によってはさらに高額になる場合もあります。一方で、家庭犬として迎える場合は必ずしもショータイプやスポーツタイプにこだわる必要はなく、健康状態と性格の良さを最優先に考えることが望ましいでしょう。

次に、里親制度を通じて迎える場合です。ウィペットは日本ではまだ頭数が少ないため、保護犬として出回る数は多くありません。しかし、ブリーダーの繁殖引退犬や飼育放棄された犬が動物保護団体や個人のボランティアを通じて里親を募集するケースはあります。
里親として迎える場合の費用は、基本的に医療費やワクチン接種、去勢・避妊手術の実費を負担する形となり、数万円程度が目安です。
金銭的な負担は購入より軽減されますが、成犬からのスタートになる場合が多いため、性格や生活習慣を理解しながら新しい環境に慣れさせていく根気が必要です。また、過去の飼育環境によっては人に対して慎重になっている個体もいるため、愛情と時間をかけて信頼関係を築く覚悟が求められます。

海外からの輸入という方法も存在します。特に本場イギリスやアメリカではウィペットの頭数が多く、優良な血統犬が入手しやすい環境です。ただし、輸入には輸送費や検疫に関わる費用が加算され、総額で50万円以上になることも少なくありません。また、輸入手続きの煩雑さや犬への負担を考えると、よほどのこだわりがない限り国内のブリーダーから迎える方が現実的です。

迎え入れる際に最も大切なのは「信頼できる相手から迎える」ことです。健全な繁殖を行っていない業者や無理な交配による子犬は、健康上のリスクを抱えている場合があり、後々の治療費や飼い主の精神的負担が大きくなる可能性があります。見学時には犬舎の清潔さ、親犬の健康状態や性格、子犬の育成環境をしっかり確認することが必要です。また、ブリーダー自身が犬種に対してどれだけの理解と愛情を持っているかも大切な判断材料になります。

総じて言えば、ウィペットはまだ国内流通が少ないため、迎えるまでに時間や労力がかかることもあります。
しかし、その過程を通じて信頼できる出会いを選び抜くことで、長い時間を共に過ごすにふさわしい良きパートナーと巡り会うことができます。
ブリーダーから迎えるにせよ、里親制度を利用するにせよ、「健康」「性格」「飼育環境」の3点を重視することが、ウィペットと幸せな生活を送るための第一歩となるでしょう。

ウィペットの動画集

[再生は画像をクリック]

ウィペットの動画 その1

ウィペットの動画 その2

ウィペットの動画 その3


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